祖父との旅
今日から始まった「春との旅」は仲代達也扮する74歳の老人と19歳の孫娘が、親類を訪ねて旅をする物語。旅を通して、生きることの難しさと、素晴らしさとをスクリーンに映し出し“生きることとは何なのか“をテーマに、終の棲家を探しに出た老人と孫娘の旅を描く。
映画を見ている時僕は子供のころ行った祖父との旅を思い出していた。映画と違い、僕は、まだ小学生だった。最初の旅は大阪万博。今年のような暑い暑い夏。初めての関西、初めての都会、初めての両親から離れた旅。子供ながらの異世界の旅は今でも強烈に記憶に残っている。ハイカラ好みの父とは違い、心の底から関西商人だった祖父は、青森市でもちょとした有名人だった。今でもたまに祖父を知っている人から「随分イジメラレタ話」を聞く。きまって役所や税務署や銀行の人だった方々だが、道理に合わなければとことん戦うそんな祖父。趣味は大工仕事(といっても大工さんにここなおせ、ここに棚作れ的な大工使い趣味)と喧嘩(これも殴り合いではなく裁判沙汰)。今の劇場の前の国道が拡張される計画が持ち上がった時も反対運動を起こして浅虫から新城まで毎日おにぎりと水筒に水入れて国道沿線の家々を周って歩いたりした。
旅の行く先々でも国鉄の切符売り場で喧嘩。甲子園でも喧嘩。いそがしいじいちゃんだった。それでも孫には優しいじいちゃんだった。まだ関西商人の匂い残っていた時代の近江蚊帳の問屋さんや泉州の毛布屋さんと商売の話をしている間、遊んでくれた小僧さんは今どうしているのだろう。もう40年も前の話だ。でも思い返すと祖父と旅をしたことのある孫なんてそういないかも。今思えば貴重な体験をしたものだ。
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