2002年7月12日

音響の話

Filed under: 奈良屋通信 — Cinamedict @ 12:00 AM

 最近シネマディクト館主としての悩みというか、こまったことが劇場の音響についてで、「音がでかすぎる」「もっと低くしろ」とクレームをつけるお客様が たまにいます。OPEN当初は、まだ映画のデジタル音響に慣れない年配のかたが結構「うるさい」「音量が大きすぎる」とよくいわれたのですが。最近若い人 たちも「うるさい」といわれます。でも少しだけ我慢して欲しいのです。確かに音でかいです。
あるひとから青森で一番"でかい"音出す映画館といわれました。でもただ単に"でかい"わけじゃありません。
映画を上映するにあたって劇場の大事な部分に音響設備があります。
1970年代から続いた光学録音のドルビーステレオもドルビーステレオSRと進化して来ましたが、1990年代にはいるとサウンドトラックのデジタル化の機運が高まり、現在までに4社による開発、発表がされています。
Cinema Digital Sound (CDS)KODAK社とORC社の共同開発による方式この方式は音源を記録するフイルム・ポジションが現在も使用されているアナログ・サウンド・トラッ クやドルビーSRと同じ場所に音源を記録していたため互換性がなく普及せず開発が中止され使用されていません。

(DTSのロゴです)


DTS

デジタル・シアター・システム社が開発した方式で最初日本の松下電器の技術協力もあり当時その傘下にあったユニバーサル映画が採用したデジタル方式です。 他社と大きく違うのはCD-ROMが音を再生する方式でフイルムにはそれを制御する信号が記録されています。

SDDS
ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンドの略で日本のソニー社が開発した方式。ソニーが親会社の旧コロンビア映画、現ソニー・ピクチャーズが主に採用したデジタル方式です。

SR-D
スペクトラム・レコーディング-デジタルの略です。ドルビー研究所の開発による方式で他の2方式(DTS、SDDS)が開発した会社がその傘下の映画会社 に影響力を及ぼしたのに対し、ドルビー社はその前に普及していたアナログ・サウンド・トラックから進化したSR音響がすでに普及しておりそのSR音響が他 のデジタル同様デジタル再生時のバックアップとしての役割も生じたことも手伝い作品的には一番採用されたデジタル方式といえます。

(DTSのコンピュータ部分です)

デジタル音響が普及しだした当初(ちょうどシネマディクトがオープンしたくらいの時)映画によってデジタルの方式がユニバーサルならDTS、コロンビア (ソニー)ならSDDSといった方式だけ一種類だけ採用した映画や、DTSとSR-DとかSDDSとSR-Dといった二種類の方式を組み合わせた映画など がありシネマディクトではSR-DとDTSの2方式を採用しました。
この二方式あれば当時の大体のデジタル音響が再生できるからでした。でもハードがそろっていてもそれだけで良いという訳にはいきません。音響に興味がある人は知っていると思いますが劇場の中は箱なので音がぶつかり合って残響がおきます。
またうちは劇場が二つありますがこの二館の音が干渉しないように、二階が耳鼻科の
医院ということもあり防音についても残響についても設計の段階からちょっとやり過ぎたくらい気を使いました。その結果ドルビーSR-Dのレベル7で上映し ています(というか上映できますと言ったほうが正確)。これは上映の音響レベルの基本です。

(これでSR-DとDTSのフイルムの信号をよみとります)

この前上映した「マルホランド・ドライブ」のD・リンチ監督は3デシベル上げろ(きもち上げ)、フレームもちょいあげの指示が手紙で来ていました、ちょっ と前の「プライベート・ライアン」の時のスピルバーグなどは上映に際して映写の指示のビデオまで送りつけています。作り手のイメージどおりに上映するのは 劇場の基本と僕は思っているのでほんの少しだけ我慢してください。日頃耳にしない大音響でも慣れてくると快感に変わります。
でも問題もあります。それは予告編。映画本編の他に予告編もデジタル音響が作られるようになりテレビCMと同じで本編以上の大きい音で映画会社ごとの競争 になっているということ。アメリカではすでに製作会社、配給会社と音響会社およびMPAAなどの諸機関が集結してTASA(トレイラー・オーディス・スタ ンダード・アソシエーション)という音量基準を決める機関を設置して全米で適用しているのですが・・・(こんなところはアメリカという社会は凄いと思う) まだ日本は音量競争が続いています。日本も早く何とかならんものかと思っております。

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