アンジェラ
映画監督という職業は、本当につらいものらしい。特に名声を得てからは、いいものを作ろうとすればするほど、プレッシャーとプライドと期待がグジャグジャ になって、どこかに逃げ出したくなるほどのようだ。かの名匠、黒澤明でさえも「トラ・トラ・トラ」で苦しんだように、いい作品を作り出すということは大変 なことなのだ。フランスの映画監督リュック・ベッソンも、苦しみもがいていた(たぶん)。「グラン・ブルー」で注目され、「ニキータ」「レオン」「フィフ ス・エレメント」で低迷していた仏映画界を目覚めさせ、世界中の映画ファンが力量を認め、「ジャンヌ・ダルク」ではハリウッド資本で映画を作るにいたった が、それ以降、「TAXI」や「トランスポーター」などはスピルバーグみたいに若手の監督を起用し、脚本や製作にまわっていた。それはそれで仏映画界の底 上げにはなっていたのだろうが、本当のところは監督をしたくなかったのではないだろうか。そんなリュック・ベッソンンがついに6年ぶりに監督した作品が 「アンジェラ」。本気で人を愛したことも、愛されたこともない主人公が絶望しセーヌ河に飛び込んで死のうとしたとき、突然現れた美しい女アンジェラに出会 い、人を愛することを知る。彼が得意のラブ・ストーリーでもあるけれど、それ以上に今回はパリの街そのものの映画でもある。この白黒の90分の作品は、今 のフランス社会の閉塞感のために足下ばかり見ている若者たちに、世界中の憧れだった“花の都パリ”を映画を通して再確認して誇りを取り戻して欲しいと願う メッセージのようなきがする。
※朝日新聞のコラム「幕間小話」でヨンドコロナイ事情でボツになったの2作。
も ったいないので奈良屋通信に載せました。