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「朝日新聞ボツ シリーズ」 幕間小話

アンジェラ

映画監督という職業は、本当につらいものらしい。特に名声を得てからは、いいものを作ろうとすればするほど、プレッシャーとプライドと期待がグジャグジャになって、どこかに逃げ出したくなるほどのようだ。かの名匠、黒澤明でさえも「トラ・トラ・トラ」で苦しんだように、いい作品を作り出すということは大変なことなのだ。フランスの映画監督リュック・ベッソンも、苦しみもがいていた(たぶん)。「グラン・ブルー」で注目され、「ニキータ」「レオン」「フィフス・エレメント」で低迷していた仏映画界を目覚めさせ、世界中の映画ファンが力量を認め、「ジャンヌ・ダルク」ではハリウッド資本で映画を作るにいたったが、それ以降、「TAXI」や「トランスポーター」などはスピルバーグみたいに若手の監督を起用し、脚本や製作にまわっていた。それはそれで仏映画界の底上げにはなっていたのだろうが、本当のところは監督をしたくなかったのではないだろうか。そんなリュック・ベッソンンがついに6年ぶりに監督した作品が「アンジェラ」。本気で人を愛したことも、愛されたこともない主人公が絶望しセーヌ河に飛び込んで死のうとしたとき、突然現れた美しい女アンジェラに出会い、人を愛することを知る。彼が得意のラブ・ストーリーでもあるけれど、それ以上に今回はパリの街そのものの映画でもある。この白黒の90分の作品は、今のフランス社会の閉塞感のために足下ばかり見ている若者たちに、世界中の憧れだった“花の都パリ”を映画を通して再確認して誇りを取り戻して欲しいと願うメッセージのようなきがする。


グッドナイト&グッドラック

ハリウッドには兄貴みたいな存在の役者がいる、昔ならフランク・シナトラ、いまはそれがジョージ・クルーニーになるのだろう。映画で競演したブラット・ピッドやジュリア
・ロバーツがこぞって彼を慕っている。それだけでなく彼の凄いところは政治的にも発言や行動もしているところ。「グッドナイト&グッドラック」はジョージ・クルーニーが監督・脚本・出演の3役をこなし50年代のCBSテレビの報道番組『See It Now』のアンカーマン、エド・マローが主人公。
アカデミー賞で作品・監督はじめ主要6部門にノミネートされた題名の「おやすみなさい。そしてグッドラック」は番組の最後にマローが言う挨拶だ。舞台は1954年、マッカーシー上院議員によるアカ狩りの真っ只中。アメリカ人たちは互いを疑い、密告し、裏切り、それを恐れて沈黙した。特にユダヤ系や東欧系移民、学者やマスコミ関係者は片っ端から標的にされ、仕事を失い、破滅した。追い詰められて自殺する者も多かった。そんな時代
言葉を武器に権力に立ち向かい、アメリカを救った国民的ニュースキャスター<エド・マロー>と若き記者たちの“真実”の物語。ニュースキャスターだった父に送った”ラブレター”でもある。「今のTVは人を欺き、笑わせ、現実を隠している。それに気づかなければスポンサーも視聴者も製作者も後悔することになる。」劇中でエド・マローが48年前に言ったスピーチを再現したものだが、クイズやバラエティーでCMのたびに、話を戻し水増しして、もうすぐ登場と興味を誘いながら来週の予告だったり誠意のかけらもない今のTVにたずさわっている人々すべてにこの映画を見てほしい。
勇気と正義がこの映画には存在する。

[2006.6.12]

※朝日新聞のコラム「幕間小話」でヨンドコロナイ事情でボツになったの2作。
も ったいないので奈良屋通信に載せました。




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