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NEW! 陸奥新報 (想い出シネマ) 「陸軍中野学校」


青森市の古川にあった奈良屋劇場(今のシネマディクトの場所)で生まれ育った僕は毎日映画を見て育った。あの頃、昭和40年代は、毎日お客さんや働いている人がうなっていたような記憶しかない。もちろん、家族も皆働いているわけで子供なんか、かまっている暇などない。津軽でいう“なげわらし”だった。それなら友達と野球やなんかしていたら良いのだが、劇場がある夜店通りは、小学校の学区の境目で、通りをはさんで小学校が違った。自然に学校が違うと、それまで遊んでいた子供たちともなぜかしら疎遠になるもの。しかも、こっち側は県庁や県病、裁判所などの官庁街の近くで、あまり近所に同級生がいないという、ワンダフルな環境も整っていたために、日々、映画ばかり見ていた。当時の奈良屋は全国的にもめずらしい東映、大映、日活、東宝、松竹、いわゆる5社全部の映画の二番を上映する二番館だった。最初に公開される映画を、フィルム缶の包装の封を切るという意味で「封切り」と言うのだが、その封切り映画の上映が終わった後、少し期間を置いて上映するのを二番と言った。うちは、その二番の映画を週代わり3本立てで料金も安くして公開していた大衆向きの映画館だった。なんたって錦之助、勝新、裕次郎から若大将、寅さんまで、良いとこ取りで、他の封切館より安くて3本立てなのだから人が来ないわけがない。そんな中で、僕のお気に入りは「駅前シリーズ」や「社長シリーズ」などのお笑い物。一心太助や水戸黄門などの時代劇など、何でも見ていたが、一つだけジイチャンから「みたらあかん」命令(うちのジイチャン京都生まれで死ぬまで関西弁だった)が出ていたのが、37歳の若さで夭折した大スター市川雷蔵の「眠り狂四郎」シリーズ。その時は、なんで見ちゃ駄目なのか売店のオネーチャンに聞いて困らせもしたが、しっかりかくれて見ていた。でも、“円月殺法”以外は子供にはイマヒトツの映画だった。僕にとって雷蔵といえば「陸軍中野学校」の方がおもしろい映画だった。当時TVで「スパイ大作戦」が流行っていて、おもちゃの「スパイ手帳」が宝物だった僕は日本のスパイ映画の元祖に、とても感激したのだ。それまでの市川雷蔵は、どこか冷たい感じがしてあまり好きじゃなく、時代劇ならば、錦之助や三船敏郎の方が明るくて、わかりやすかったから好きだった。ところがスパイ役の雷蔵は、その冷たい感じがなんともカッコヨク感じられて、好きな俳優の一人になった。その後、シリーズ化された雲一号指令、竜三号指令、密命、開戦前夜と、それぞれのサブタイトルも、なにげにカッコヨク感じられた。街の床屋や銭湯に貼ってもらうポスターの下ビラ書きに使う太字のマジックペンで部屋の天井に「陸軍中野学校」と意味もなく大書して叱られたことを今でも覚えている。こうして書いていくうちに、「大魔神」「悪名」「白い巨塔」「座頭市」「女賭博師」あの頃の大映映画が見たくなった。


[2007.6.14]

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