2007年3月3日

「さくらん」

Filed under: 奈良屋通信,幕間小話 — Cinamedict @ 12:00 AM

「クダラナイ情報が勝手に自分の中に入ってくるのが嫌」だから、テレビを見な い人なのだそうである。もう10年もテレビを見ていないそうだ。確固とした個性 と信念を持って活動する人は自分の世界や感性というものを大切にしている。映 画「さくらん」の監督であり世界的に評価されているフォトグラファー蜷川実花 もそのように生きているクリエイターの一人。作品を見るとわかるが、彼女の写 す情熱的な、色彩の渦のような写真は、彼女の感性を、そのまま写しているよう な、蜷川実花の世界がある。独特の世界観や感性というものがあるから、不必要 な情報は邪魔者でしかない。自分の感性を磨く。とても大切なことだと思う。知 るということについて自由・権利があるということは反対に、知りたくない自由 や権利もあるはず。その点、映画館で見る映画は、見たい人は見るし、見たくな い人は見ない。理想的な情報でもある。
映画「さくらん」は彼女の初監督作品。原作は人気漫画家、安野モヨコの同名コ ミック。脚本は映画監督でもあるタナダユキ、音楽は椎名林檎。そして主演は、 今もっとも若い女の子に人気の土屋アンナ。今の日本強力女子クリエイター勢揃 いの、ヴィヴィット・ガールズ・ムービー。今の卒業の季節に、たとえれば矢ガ スリに紫袴、そして編みブーツ的な映画なのだ。物語は江戸時代の吉原遊郭を舞 台に、8歳で吉原につれてこられ、やがて伝説の花魁(おいらん)となった女性 の生き様を描く。今まで、江戸時代の遊郭・吉原を描いた時代劇は数々あるが、 この作品は、女性の視点で始めて描かれた。男が思っているよりももっと、たく ましく、ずうずうしく、悲しい女の世界を女たちが描く。すごいなこりゃ。

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