好きなもの
寺田虎彦ならば「イチゴ、コーヒー、花、美人、懐手にして宇宙見物」なのだが僕の場合「落語、緑茶、花、美人、夜中に明日の映画見物」となる。その落語。立川談志が亡くなった。僕の落語好きは父の影響大なのだが、とりわけ父は談志が好きで東京に仕事で行っている時も寄席で談志が出ている時はよく行っていたらしい。よっぱらってスーツで高座に出てきて「今日は酔っ払っているからまともな噺は出来ねー。でも明日は『芝浜』やるから」って次の日も寄席いって談志の「芝浜」を聞いた話を何度聞かせられたことやら。僕も大学時代よく寄席には通って談志が出ている寄席にも行ったことがある。お目にかかった談志はスーツ姿・・これはもしや・・・と思ったら始まったのがスタンダップで危ない韓国人の「代書屋」。それもなかなか聞けないものだったが少しだけ「芝浜」が聞きたかった。
僕は志ん朝の方が好きで、その志ん朝が死んで、小さんが死んで、もういいや談志もおかしなことばっかりしているし・・・そんなことで少し落語から離れたことがあった時、東京で仕事中時間が空いて末広に久々に行ってみたら「小さん祭り」なる柳家の落語会をやっていた。偶然そこでみて印象に残っていたのが喬太郎だった。「俺って柳家なんだ」そんなフレーズが記憶にこびりつく、新しい噺家も悪くない。そう思っていた矢先、劇場でいつも秋田から映画を見に来てくれているお客さんから「社長、ここで落語やらない」って声かけられる。聞けば柳家喬太郎をここでやりたい。喬太郎ってあの時の・・「いいよ」即答。そして今のディクト寄席がある。
談志が死んでもちろん寂しいのに決まっているけれど、今の僕には喬太郎がいる三三がいる、白鳥だって、白酒だって、千辰だって市馬だって遊雀だってそして志らくだっている。 涙が出てきた