長い散歩
外に出て周りを見回すと、昔と違うなーと思う風景がある。その中の一つが親子の風景。昔なら小さな子供とお母さんの、たとえばおんぶして、買い物カゴをぶ ら下げている姿。それとも、ギリッと手をつないで歩いている姿。そこには、たまにお父さんもいて、まん中に小さな子供がブランコなんかしてぶらさがって楽 しそうに歩いている姿。今なかなか見ないなー、オンブも手をつないでブランコも。近頃では、ショッピングセンターの駐車場でさえも走り回る子供たち。それ を“やめなさい”と、口だけ注意する“ママ”たち。昔も今も子供はそんなに変わらない。口で言ったって言うこと聞くわけがない。ただ手をつなぐだけだけれ ども、それだけで、言葉では伝えられないものが、手を通してつたわっていく。それは、ぬくもりであり、こころでもある。携帯でメールや電話しなくていいか ら、子供の手をつないでよ“ママ”。なんで大事な子供の手をつながないのかなー。
映画「長い散歩」は、毎日起こる悲惨なニュースに、一体全体どうなってしまったのかとさえ思える今、日本人が失いかけている優しさや愛情をテーマに、主演 に緒形拳を迎え、監督・奥田瑛二が家族と共に作り上げた渾身の作品。厳格な教育者として生きてきたゆえに家庭をかえりみず、家族を失った元校長が、母親か ら虐待を受け心を閉ざしている女の子を救い出し旅に出る。その手をつなぎ歩いていく二人の後姿が、心に降り積もった澱のような気持ちを涙で洗い流してくれ る。
人として優しさとか思いやりとかが忘れ去られようとしている今、それを取り戻さなくては。間に合うかもしれない、今ならまだ。あきらめないで。人間ならば。
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