クワイエットルームにようこそ TOO LIFE 最終回
映画の役者を決めるキャスティング(配役)の決定権は監督とかプロデューサー、今なら製作委員会などがある。だから映画の入り不入りの責任は、それほど役者にはない。それでも映画は、最終的には役者しだいで作品の良し悪しが決まるといっていい。日本映画の黎明期、映画の出演者は、歌舞伎界から転身した役者が多かった。「目玉のマッチャン」こと尾上松の助。アラカンの嵐勘十郎。その後の歌舞伎出身の役者としては市川右太衛門、片岡千恵蔵、大川橋蔵、中村錦之助、市川雷蔵など、きらびやかな時代劇のスターが勢ぞろいである。映画会社もニューフェイスといったオーディションを行い、それぞれの会社で高倉健、小林旭、三船敏郎、など自前の映画スターを生み出していった。その他、エノケン、ロッパ、渥美清、三木のり平といった浅草のレビューといわれた舞台から出たコメディアンたちや、落語家たちがスクリーンをにぎわした。むつ市出身の川島雄三監督は、ある落語家を映画に出演させるに際し、その落語家の師匠を訪れ「一人の落語家を駄目にします」と断りを入れたという。昔の芸に対しての思い入れの違いがここにもある。さて、今の映画においての役者の状況はどうだろう。残念ながら映画俳優といった人たちは、あまり見かけない。映画会社もTVも、今流行っているタレントを立て続けに使ってあきたらポイなのだ。育てよう、見出そうなんて気持ちがあまりない。そんな役者状況に一筋の光のように存在する舞台、劇団がある。古くは新派、新劇、新国劇、アングラ劇団、小劇場へと枚挙に暇もないが多くの名優・怪優は劇団出身者がほとんどといって良い。そして90年代を代表する劇団で、絶大な人気の「大人計画」の主宰でもある松尾スズキの監督作品第二弾が「クワイエットルームにようこそ」。出演は内田由紀、大竹しのぶ、宮藤官九郎、妻夫木聡、蒼井優など今注目の役者ぞろいな一筋縄ではいかない映画なのだ。