立川という流れ
父が談志の大ファンであったというのと、僕自身が大学生の時「新宿末広」で談志のあぶない「代書屋」や、スーツ姿でのスタンダップトークなど凄い舞台を見せられたこともあって、落語=談志という初めの落語の刷り込みが強烈なぶん、いざ自分が落語を聞かせる側になると立川は臆する部分が正直あった。プロデューサーの長谷川さんが「”志らく”いかが」と聞かれても、いつものように”いいねー”って即答はしたものの、どこか避けたい気持ちがあった。喬太郎や白鳥とはちがう、何か犯してはいけない領域”立川”を、知らず知らずに作っていたのかもしれない。喬太郎の「俺って柳家?だったんだ」のギャグではないけれど、志らくだって元をただせば柳家なんだ。そう思って、決定したこっちの事情とは関係なく、志らくはやって来た。初めてのときは事前に、とっても人見知りだってことを教えてもらってたけれど。ものすごい人見知りなので大人数。(ディクト寄席に来る噺家さんは基本的に一人でやってくる。)お弟子とマネージャーと志らくファン代表という松田優作ファンの叔父さんと来たので控え室狭いから社長室開放したりして、なかなか手ごわそうな神経質な感じ。他の噺家さんとちがってるけれど、不快ではない、近寄りがたいオーラが出ていた。でも、長谷川さんの無茶振りのリクエストにもちゃんと答えてくれる良い人でもある。もちろん噺そのものは素晴らしい。そして今回二回目のディクト寄席。今度はお弟子と二人。あいかわらずのシャイニング・ボーイだが二回目だからなのか軽やか。そして、驚いた。何かが違うのだ、これまでの書生ぽい匂いは消えうせ、師匠の真似はともかく(絶品だが)噺の中での談志らしさもなく、うまく言えないが、まさしく志らくの落語があった。何かスゴイ落語会になってきた。