2007年8月27日

朝日ボルベール

Filed under: 奈良屋通信 — dict @ 4:11 PM

スペインは、その昔イスラムの文化とキリスト教の文化が、せめぎあった
場所だったためか、同じヨーロッパの文化圏の中でも少し異質感がある。
壁紙の模様にしてもアラベスクを思い浮かべる幾何学模様、心に突き刺
さるような原色を多用した色彩、それがスペインなのだというものがたく
さんある。文化というものは混ざり合うごとに強く特異になっていくのだろ
うか。スペインが生んだ映画監督、ペドロ・アルモドバルは、人間の業の
深さや、女の強さ、したたかさ、やさしさ、そして哀しさを「オール・アバウ
ト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」などで描いてきた。
新作「ボルベール<帰郷>」も、母として、娘として、そして女として人生
をたくましく生きる女たちの生き様をタンゴの名曲“ボルベール”に乗せて、
哀しくも可笑しい、祖母・母・娘三世代の人生を綴った感動のドラマになっ
ている。主演のペネロペ・クルスは、アルモドバル監督の代表作「オール・
アバウト・マイ・マザー」で脚光を浴び、アメリカに進出して数々のハリウッ
ド作品に出演した。
トム・クルーズと浮名も流し、そこそこ活躍はしていたが、これといった
作品にはめぐり合わなかった。そして久しぶりに故郷のスペイン映画に
出演、しかもアルモドバル作品である。監督としては“お尻”だけは気に入
らなかったらしく、ペネロペは付け尻をして撮影にいどんだ。そして、綺麗
なだけのお姉さんではなく、情熱的で、したたかで、酸いも甘いも知り尽く
したスペインの女を見事に演じきっている。
カンヌ映画祭では、異例ながら出演した女優6人に最優秀主演女優賞が
贈呈され、米アカデミー賞では主演女優賞にノミネートされた。いろいろ回
り道したけれど、本物の女優になって帰ってきた彼女自身の<帰郷>そ
のものだったわけだ。

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