2006年12月24日

鉄コン筋クリート

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今、外国ではクール・ジャパンといって日本の食や文化がブームらしい。すし屋が世界の大都市では普通にあるようになり、それどころか、あんまり変な日本食 が横行するので、ちゃんとした日本食に、お墨付きをあげようとしたら自分のことは棚に上げ、異文化にちょっかいを出されるのを嫌うアメリカのメディアが、 異常反応をおこしているほどだ。そして“オタク文化”マンガ・アニメ・ゲームも世界中にファンがいる。その中でもアニメは、もはや本家日本も巻き込んで ボーダレスの世界だ。「鉄コン筋クリート」は、そんなアニメーションの世界で、今一番注目されているどころか、“この作品がこれからのアニメの指標とな る”とまで言われている作品。原作は「ピンポン」「青い春」など映画化されると何かと話題になる松本大洋の傑作マンガの映画化。義理と人情の架空の街“宝 町”で自由に飛びまわる2人の少年クロとシロの冒険をダイナミックに描く。監督のマイケル・アリアスは、もともとはコンピューター・ソフトの開発者でアメ リカのコンピューター・アニメの第一人者。じつはこの人、日本に来て、おもちゃ屋さんでフィギアを見ながら「おぅ~バルタン星人~」なんて日本語で言う正 真正銘のオタクなアメリカ人。その彼が原作マンガと出合って、どうしてもアニメ化しようと長年苦労を重ね、さまざまな人々に支えられてやっと完成したのが 「鉄コン」なのだ。アニメだけではないが、思い入れが強いほど、いいものが多いのは世の習いでもある。日本で生まれアメリカ人によって作られたアニメ映 画。映画の宣伝文句を専門用語でジャックというのだが、「大人の女性でも見て絶対裏切られない感動作」「映画館で見たことを自慢したくなる映画」ジャック も凄いや。

2006年12月1日

敬愛なるベートーヴェン

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昔から年末は、なんでこんなに忙しいのかといつも思う。御歳暮、クリスマス、 年賀状、大掃除、餅つき、しめ飾り、などなど。新たなる年を迎えるにあたって、 いろいろなことをしなければ日本人は年があけない。なのに、である。"フロィ デ シェーネル ゲッテル フンケン トッホテル アウス エーリージウム"。
知っている人は知っている、知らない人は、なんだべ、と思うかもしれない。第 九である。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートヴェン作曲の交響曲第九番 二短調 第4楽章の「歓喜の歌」の本国ドイツ語バーションをカタカナ表記したらこうな る。なぜか年末、日本ではたくさんの人が第九を歌う。日本語バージョンも、も ちろんあるけれど、やっぱりドイツ語でなくちゃ気分が出ない。年末で、みんな 忙しいはずなのに練習して、おめかしして楽しむのだからやっぱりドイツ語で" フロィデ シェーネル ゲッテル フンケン" なのだ。映画「敬愛なるベート ーヴェン」は、世界中にその作品を愛されながらも、生涯に渡り、孤独で孤高の 天才音楽家といわれたベートーヴェンの物語。傑作!第九ができた時のエピソー ドを、史実に基づきながらも、耳の聞こえないベートーヴェンの作曲した音楽を、 楽譜に清書する"コピスト"を女性とし、歴史に隠された師弟愛を超越した絆を描 いている。この映画を見たら、よりいっそ第九を、そしてベートーヴェンを知り、 好きになり、今まで以上に魂込めた第九が歌えるかもしれない。しかも、青森市 の友好都市であるハンガリー・ケチケメート市でロケされたというのだから、こ れは見なきゃ。

2006年6月12日

グッドナイト&グッドラック

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ハリウッドには兄貴みたいな存在の役者がいる、昔ならフランク・シナトラ、いまはそれがジョージ・クルーニーになるのだろう。映画で競演したブラット・ピッドやジュリア
・ロバーツがこぞって彼を慕っている。それだけでなく彼の凄いところは政治的にも発言や行動もしているところ。「グッドナイト&グッドラック」はジョー ジ・クルーニーが監督・脚本・出演の3役をこなし50年代のCBSテレビの報道番組『See It Now』のアンカーマン、エド・マローが主人公。
アカデミー賞で作品・監督はじめ主要6部門にノミネートされた題名の「おやすみなさい。そしてグッドラック」は番組の最後にマローが言う挨拶だ。舞台は 1954年、マッカーシー上院議員によるアカ狩りの真っ只中。アメリカ人たちは互いを疑い、密告し、裏切り、それを恐れて沈黙した。特にユダヤ系や東欧系 移民、学者やマスコミ関係者は片っ端から標的にされ、仕事を失い、破滅した。追い詰められて自殺する者も多かった。そんな時代
言葉を武器に権力に立ち向かい、アメリカを救った国民的ニュースキャスター<エド・マロー>と若き記者たちの“真実”の物語。ニュースキャスターだった父 に送った”ラブレター”でもある。「今のTVは人を欺き、笑わせ、現実を隠している。それに気づかなければスポンサーも視聴者も製作者も後悔することにな る。」劇中でエド・マローが48年前に言ったスピーチを再現したものだが、クイズやバラエティーでCMのたびに、話を戻し水増しして、もうすぐ登場と興味 を誘いながら来週の予告だったり誠意のかけらもない今のTVにたずさわっている人々すべてにこの映画を見てほしい。
勇気と正義がこの映画には存在する。

※朝日新聞のコラム「幕間小話」でヨンドコロナイ事情でボツになったの2作。
も ったいないので奈良屋通信に載せました。

アンジェラ

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映画監督という職業は、本当につらいものらしい。特に名声を得てからは、いいものを作ろうとすればするほど、プレッシャーとプライドと期待がグジャグジャ になって、どこかに逃げ出したくなるほどのようだ。かの名匠、黒澤明でさえも「トラ・トラ・トラ」で苦しんだように、いい作品を作り出すということは大変 なことなのだ。フランスの映画監督リュック・ベッソンも、苦しみもがいていた(たぶん)。「グラン・ブルー」で注目され、「ニキータ」「レオン」「フィフ ス・エレメント」で低迷していた仏映画界を目覚めさせ、世界中の映画ファンが力量を認め、「ジャンヌ・ダルク」ではハリウッド資本で映画を作るにいたった が、それ以降、「TAXI」や「トランスポーター」などはスピルバーグみたいに若手の監督を起用し、脚本や製作にまわっていた。それはそれで仏映画界の底 上げにはなっていたのだろうが、本当のところは監督をしたくなかったのではないだろうか。そんなリュック・ベッソンンがついに6年ぶりに監督した作品が 「アンジェラ」。本気で人を愛したことも、愛されたこともない主人公が絶望しセーヌ河に飛び込んで死のうとしたとき、突然現れた美しい女アンジェラに出会 い、人を愛することを知る。彼が得意のラブ・ストーリーでもあるけれど、それ以上に今回はパリの街そのものの映画でもある。この白黒の90分の作品は、今 のフランス社会の閉塞感のために足下ばかり見ている若者たちに、世界中の憧れだった“花の都パリ”を映画を通して再確認して誇りを取り戻して欲しいと願う メッセージのようなきがする。

※朝日新聞のコラム「幕間小話」でヨンドコロナイ事情でボツになったの2作。
も ったいないので奈良屋通信に載せました。

2006年3月5日

「歓びを歌にのせて」

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「歓びを歌にのせて」は、厳しい吹雪の冬が印象的なスウェーデンの映画だ。主人公のダニエルは世界的に名声を得ている音楽家。しかし、演奏で世界中を飛び 回り身も心もボロボロになり、ついに舞台で倒れてしまう。そして、8年後まで埋まったスケジュールをすべてキャンセルし、生まれ故郷の田舎に安息を求めて 移り住む。
そこで、静かな余生を送るつもりだった。だが、教会の神父にコーラスの歌唱指導を頼まれる。最初は嫌がっていた彼も、音楽の素晴らしさを改めて感じ、自 分の作りたい音楽を目指すようになる。コーラスの人々もまた、それぞれに問題を抱え生きていたが、ダニエルを通し、音楽から勇気をもらい人生の一歩を踏み 出す自信を持っていく。
映画の中で手をつなぎ、みんなで歌っている人々の顔は、とても幸せそうで、演技を越えて音楽の素晴らしさが伝わってくる。苦しみの中で受ける感動はとて も深く、貴い。歌は人々に希望を与え元気をくれるものだと気づかせてくれる。悲しい時、つらい時、楽しい時、うれしい時、人間には歌がある。
本国スウェーデンで大ヒットを記録し、さらには昨年のアカデミー外国語映画賞ノミネートの快挙を成し遂げた珠玉の一本。監督のケイ・ポラックは、このド ラマチックな物語には、特別な光があふれる夏と吹雪で覆われる厳しい冬とのコントラストが必要不可欠だと、スウェーデン北部でこの映画を作った。
青森もまた、その地に似て厳しい冬とねぶた祭りを代表する熱い夏がある。そう思うと、今年も雪で大変だが、この街もわるくないなと思う。

2006年2月18日

アカデミー賞

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この季節、正月映画の狂騒が終わり映画業界はアカデミー賞の季節。年末あたりから予告編やポスターに「アカデミー賞最有力」の文字が躍り、みんな最有力候 補の勢いだ。ノミネート発表後に、選考から漏れてしまって急いでポスターや映画の予告編を差し替える、なんてしゃれにならないこともあるけれど、とりあえ ず話題はアカデミー賞なのだ。
でも、今年のノミネートの面々を見ると正直、地味というか、アカデミー賞らしくない。最多ノミネートがアン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」。
次いで「クラッシュ」と低予算の独立系作品が主にノミネートされている。ストーリーもカウボーイの同性愛の話や、人種差別の愚かさなど、作品的には悪くはないのだが、これまでのオスカーレースでは考えられない作品が主役。
メジャー作品もカントリー歌手ジョニー・キャッシュの生涯を描いた「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」、スピルバーグ監督の「ミュンヘン」がノミ ネートされてはいるが、こちらも地味。かろうじて「プライドと偏見」が華やかな作品としてノミネートされたくらいだ。
今、ハリウッド映画は過渡期をむかえている。マーティン・スコセッシやジョージ・ルーカスなど大作を作ってきた監督たちが、もう制作費が100億円を超 えるような大作は作りたくないと言い出しているし、興行的にも下降線をたどっている。いまここにきて、粗製乱造のつけがまわってきた感じだ。
だが、ハリウッドが、このまま終わるわけがないと思う。その点、今回のアカデミー賞は、ある意味、新しいアメリカ映画のターニング・ポイントなのかもしれない。

2006年2月3日

プライドと偏見

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「プライドと偏見」はイギリスの女流文学の最高峰、ジェーン・オースティンの名作の映画化。18世紀末のイギリスが舞台。絵画のような田園風景や壮大なお 城の数々でのオール・ロケで“結婚“がテーマの乙女心をくすぐる映画なのである。物語はプライドが高いがために正直に「愛している」と、なかなかいえない 大富豪の青年と、気が強く純粋がための偏見が、本当の愛を曇らせてしまう主人公エリザベスの恋の物語。主演は、今最もハリウッドで輝いているキーラ・ナイ トレイ。純粋でノーブル、そしてはじらいがある演技は、ゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされた。「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・ アクチャアリー」を製作したスタッフが時にはユーモラスに、時には格調高く、二人の恋の行方をいきいきと映し出している。原作者オースティンは「結婚と は、自分の本当の心を見つけること」といっているように、時代が変わっても「結婚」という言葉の憧れは今でも変わらない。「プライドと偏見」、それを捨て 去ったとき二人に幸せが訪れる。この映画は、そんな心ときめく憧れの映画なのだ。かくいう私も結婚してもう20年もたつが、いまだに手をつないで歩いてい る。そこには「プライドも偏見」も存在しない。存在するのは信頼と少しばかりの畏れ。時に人はそれを愛とよぶ。

博士の愛した数式

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「博士の愛した数式」の主人公は不慮の交通事故で、記憶が80分しかもたない寺尾聡扮する天才数学者と彼を世話する家政婦、そしてその息子の物語。博士は 記憶がなくなり何を喋っていいか混乱した時、言葉の代わりに数字を持ち出す。友愛数を「神のはからいをうけた絆の数字」。√は「どんな数字でも嫌がらずに 自分の中にかくまってやる、実に寛大な記号」なんて言い方をして、数式は美しく、キラキラと輝く素敵な世界なのだと教えてくれる。原作は小川洋子の100 万部を超えるベストセラーの映画化。本屋が読んで欲しいと願い、誇りを持って薦める本に贈る第一回本屋大賞を受賞している。原作の潔い、敬う、慈しむ、毅 然などの美しい日本語を映像として表現したのは「雨あがる」「阿弥陀堂だより」の小泉堯史監督と、巨匠黒澤明監督の流れを汲む人々。厳しくも優しい、人を 愛することの尊さを問いかける日本映画。フィクションみたいな残酷な現実が日々起こっている今、この映画はいつまでも心に残る暖かく優しい気持ちにさせる 感動作。なくなりそうな日本人の心をもう一度考えさせてくれるそんな映画なのです。

モンド・ヴィーノ

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「モンド・ヴィーノ」は世界中のワインの“今”のお話。ワインは世界中で作られ、たくさんの産地があるので選ぶのが大変。そんなとき、アメリカのワイン評 論家ロバート・パーカー・Jrがワインに点数を付けたパーカーズ・ポイントでワインを選ぶのが流行っている。「よくわかんないから、とりあえずパーカーさ んが薦めるんだからまあいいか。」世界中の人々がそんな感じだから、パーカーさんオススメは、スーパーの“今売れています“マークよりも信頼されて、彼が 高い点数を付けたワインは、需要と供給の経済原理で一本何万円もするようになる。そしてコインの裏側のように、この業界に存在する「売れるワイン」を作る 技術を伝授するコンサルタントと、巨大資本をバックに世界中で高値のワインを造ろうとするアメリカの巨大ワイン企業。彼らの売れるワインを作る技術と戦略 に対抗する気候風土(テロワール)を守り、昔からの伝統的なワインを造り続ける人々との、エゴと欲望の戦いは見ごたえある。そして気がついた。衣・食そし て映画さえも同じなのだ。「みんなが良いというのなら、それが良い」そんな風潮が世界中に蔓延している。スタンダード、グローバリネーション、言葉は違う が均一化してきていることは考えようでは恐ろしい。もっと自分で選ぶことの大切さを考えさせてくれる。ワイン好きでなくても、このドキュメンタリーは今の 世界を考えさせる奥の深い映画なのだ。

マザー・テレサ

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中学生のとき、哲学者キルケゴールの本をわけもわからず読んだ。その時は、何か哲学的な雰囲気だけを味わいたかったのだが、
結局キリスト教的な愛を理解できなくてただ苦痛だけが残った。そりゃそうだ、普通に女の子を好きになる事さえままならぬ中学生が、
自己犠牲的な愛なんてわかるわけがない。
映画「マザー・テレサ」は、そんなキリスト教的な愛、宗教の枠をも超えて、貧しく困窮している人々に愛を奉げ続けた女性の物語。
主演のマザー・テレサを演じるのは「ロミオとジュリエット」のオリビア・ハッセー。36歳から87歳までのマザー・テレサを渾身の力で演じきり、見る者の胸を熱い感動の涙で満たす。
愛とは何ぞやと問えば「痛み」なのだ。その、人の「痛み」に、どんなときでも優しさを分け与え、そして「痛み」をわかちあうのが愛なのだということをマザー・テレサは教えてくれる。
文明の再野蛮化しつつある現代においてマザー・テレサの尊い愛を私達は忘れてはいけない。

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